古川日出男

護摩ごまは邸内いっぱいに立ち籠めている。焚き入れられた芥子けしが臭う。それを三人の女がそれぞれに嗅かいでいる。一人は、褥しとねにいる。一人は、間仕切りの几帳きちょうの向こう側にきちんと膝を揃えて座している。一人はしきりと立ち働いている。だが三人とも嗅かいでいる。